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朝晩は涼しくなったのに、日中はまだ汗ばむ。そんな季節の変わり目に、子どもが鼻水を出したり、咳をしたり、発熱したりすることがあります。
「気温差のせいかな?」と思うかもしれませんが、子どもの体調不良には、気温や湿度だけでなく、ウイルスなどの感染症の流行状況、集団生活、睡眠、換気、アレルギーなど、さまざまな要因が関係します。
この記事では、薬剤師の視点から、季節の変わり目に注意したい症状と家庭でできるケア、市販薬を使用するときの注意点、そして医療機関への相談・受診を考える目安を整理します。
1.なぜ季節の変わり目に子どもが体調を崩しやすいの?

「季節の変わり目だから体調を崩す」という単純な一つの原因があるわけではありません。
秋から冬、冬から春などには、気温や湿度、生活環境が変化します。また、呼吸器感染症の流行状況も季節によって変動します。さらに、保育園・幼稚園・学校などの集団生活では、子ども同士の接触機会が多く、呼吸器感染症の原因となるウイルスなどにさらされる機会も増えます。
したがって、季節の変わり目に鼻水や咳、発熱がみられた場合、「寒暖差が原因」と決めつけるのではなく、感染症、アレルギー性鼻炎、喘息などを含めて症状を観察することが大切です。
「寒暖差アレルギー」は本当のアレルギーなの?
「寒暖差アレルギー」という言葉が使われることがありますが、これは一般的な呼び方で、花粉症などのアレルゲンによるアレルギー反応とは異なる「非アレルギー性鼻炎」を指して使われる場合があります。
温度変化などの刺激によって鼻粘膜の血管や神経の反応が変化し、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどが生じることがあります。ただし、「1日の気温差が○℃以上なら発症する」というような一律の医学的基準が確立しているわけではありません。
そのため、「気温差が7℃以上になると寒暖差アレルギーが起こる」といった数値を一般的な医学的基準として扱うのは適切ではありません。
乾燥すると、鼻や気道への負担が増えることも
鼻や気道には、粘液と線毛運動によって異物を排出する「粘液線毛クリアランス」という防御機構があります。湿度などの環境条件は、気道表面の水分状態や粘液線毛クリアランスに影響します。
査読論文では、低湿度の環境が気道の乾燥や粘液線毛クリアランスの低下と関連することが報告されています。一方で、室内湿度を調整すれば子どもの感染症を確実に予防できる、という意味ではありません。
また、呼吸器感染症の発生には湿度だけでなく、換気、ウイルスの種類、人との接触、感染者からの曝露など多くの要因が関係します。
2.季節の変わり目にできる、おうちケア4つのポイント

① 子どもが快適に過ごせる服装にする
「季節の変わり目だから厚着をさせる」のではなく、室温や屋外の気温、活動量に合わせて衣服を調節しましょう。
特に、走り回った後などは汗をかくことがあります。汗で衣服が濡れている場合は、必要に応じて着替えさせます。
なお、「汗をかくと風邪をひく」と医学的に単純化することはできません。衣類調節の目的は、感染症を直接予防することよりも、暑さ・寒さによる不快感や過度な体温負担を避けることです。
② 室内は乾燥しすぎないようにする
乾燥した空気は、鼻や気道の粘膜に負担をかける可能性があります。加湿器などを使用する場合は、室内の湿度を確認しながら調整しましょう。
室内湿度については、査読されたレビューで相対湿度40~60%程度が呼吸器の健康や感染リスクとの関連から検討されている範囲の一つとして報告されています。ただし、すべての呼吸器ウイルスで同じ結果になるわけではなく、「湿度を50~60%にすれば感染症を予防できる」と断定できるものではありません。
加湿しすぎると結露やカビなどの問題につながることもあるため、湿度計を使いながら調整するのがおすすめです。
③ 水分は少量ずつ、子どもの状態に合わせて
発熱、嘔吐、下痢などがある場合は、水分不足になっていないか注意します。
吐き気や嘔吐がある場合には、一度に大量に飲ませるよりも、少量を繰り返し与える方法が一般的です。実際の飲ませ方は、子どもの年齢、体重、症状、脱水の程度によって異なります。
④ 経口補水液は「脱水時」に使う
経口補水液は、単なる清涼飲料水やスポーツドリンクとは目的が異なります。消費者庁は、経口補水液を脱水状態における水・電解質の補給に用いる病者用食品と説明しており、脱水状態でない人が普段の水分補給として飲むものではないとしています。
経口補水液には、一般的な清涼飲料水よりナトリウムやカリウムなどの電解質が多く含まれています。そのため、健康な子どもが「念のため毎日飲む」という使い方は適切ではありません。
一方、感染性胃腸炎などによる下痢・嘔吐や、発熱・発汗などによって脱水が疑われる場合には、製品の表示を確認し、必要に応じて医師・薬剤師・管理栄養士などに相談してください。
特に乳幼児、持病がある子ども、食事や水分摂取について医師から指示を受けている子どもでは、自己判断で大量に与えないことが重要です。
3.子どもの市販薬を選ぶときの注意点

子どもの薬は「大人用を少なくすればよい」というものではありません。
同じ有効成分でも、製品によって含有量、対象年齢、1回量、1日の服用回数が異なります。特に解熱鎮痛薬は、複数のかぜ薬・解熱鎮痛薬を重ねて使用すると、同じ成分を重複して摂取する可能性があります。
解熱鎮痛薬では「アセトアミノフェン」が小児に使用されることがある
アセトアミノフェンは、小児の発熱や疼痛に対して医療現場でも使用されている解熱鎮痛成分です。小児の解熱薬については、体温の数字だけを下げることを目的とするのではなく、発熱によるつらさや不快感を軽減する目的で使用することが推奨されています。
2026年に公表された小児発熱管理の臨床実践ガイドラインでも、解熱薬は routine に使用するのではなく、発熱による苦痛や機能低下がある場合に検討するという、症状を重視した考え方が示されています。
市販薬は「製品ごとの対象年齢」を必ず確認
例えば、現在販売されている小児用バファリンCIIはアセトアミノフェンを1錠中33mg含有する小児向け製品で、3歳以上15歳未満を対象としています。一方、タイレノールAは1錠中アセトアミノフェン300mgを含有し、15歳未満は服用できません。
また、カロナールAも医療用医薬品の「カロナール」と名前は共通していますが、市販薬として販売されているカロナールAには小児用量が設定されておらず、15歳未満は服用できません。
このように、同じ「アセトアミノフェン」でも、医療用医薬品と一般用医薬品、さらに製品ごとに使用できる年齢や用法・用量が異なります。
「大人用の錠剤を半分にすれば子どもに使える」と自己判断するのは避けてください。子どもに市販薬を使用する場合は、必ずその製品の添付文書・説明書に記載された対象年齢、用法・用量を確認しましょう。
また、他のかぜ薬などにアセトアミノフェンが含まれている場合があります。複数の製品を併用する場合は、成分の重複について薬剤師に確認すると安心です。
「熱が高い=必ず解熱薬」ではない
発熱は感染症などに対する身体の生理的な反応の一つです。小児の発熱管理では、体温の数字だけでなく、水分が取れているか、呼吸が苦しくないか、意識や反応が普段と大きく違わないかなど、全身状態を観察することが重要です。
解熱薬を使用しても、感染症そのものを治療するわけではありません。使用目的は主として発熱に伴う苦痛を軽減することです。
乾燥肌には保湿剤を。ただし「感染予防薬」ではありません
秋から冬にかけては皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥肌では皮膚のバリア機能が低下しやすいため、適切な保湿によって皮膚状態を維持することは重要です。
ヘパリン類似物質を有効成分とする外用剤には、皮膚の保湿などを目的として使用される製品があります。医療用のヘパリン類似物質製剤には0.3%製剤などがあります。
また、一般用医薬品にもヘパリン類似物質0.3%を配合した製品があります。例えば「ヒルマイルド」シリーズは、2026年4月時点でヘパリン類似物質0.3%を配合した乾燥肌治療薬として販売されています。
ただし、ヘパリン類似物質外用剤は「風邪や感染症を予防する薬」ではありません。乾燥肌、ひび、あかぎれなど、製品に表示された効能・効果を確認して使用してください。
皮膚に赤み、腫れ、強いかゆみ、浸出液、痛みなどがある場合や、保湿しても改善しない場合は、湿疹や感染症など別の皮膚疾患の可能性があるため、医療機関または薬剤師に相談しましょう。
4.こんな症状があれば、早めに医療機関へ

子どもの体調不良では、体温の数字だけで緊急性を判断することはできません。特に重要なのは、意識、呼吸、水分摂取、顔色などの全身状態です。
厚生労働省は、子どもについて、以下のような症状がある場合には救急車を呼ぶことを検討するよう案内しています。
- 意識がおかしい、反応が悪い
- けいれんがある
- 唇の色が紫色になっている
- 顔色が明らかに悪い
- 激しい咳やゼーゼーがあり、呼吸が苦しそう
- 呼吸が弱い
- 激しい嘔吐・下痢などで水分が取れず、意識がはっきりしない
- 生後3か月未満の乳児で、急な体調不良や発熱がある
これらはあくまで代表的な緊急サインです。子どもの状態が急速に悪化している、いつもと明らかに様子が違うなどの場合には、年齢や体温だけで判断せず、救急医療機関への相談を検討してください。
特に「呼吸」と「意識」は重要
鼻水や咳があっても、普段どおり遊べて水分も取れている場合と、呼吸が苦しく横になれない場合では緊急度が大きく異なります。
「ゼーゼーする」「肩で息をする」「胸やみぞおちのあたりが呼吸のたびにへこむ」「唇が紫色になる」「呼びかけへの反応が悪い」などがある場合は、家庭で様子を見るのではなく、速やかに医療機関への相談・受診を検討してください。
発熱の高さだけで重症度を決めない
発熱の程度だけで重症度を判断することはできません。小児発熱のガイドラインでも、意識障害、脱水、循環不全などの警告所見を重視しています。
特に生後3か月未満の乳児の発熱は、重症感染症のリスクを考慮する必要があるため、自己判断で長時間様子を見ることは避け、医療機関に相談してください。
5.夜間・休日に迷ったら「#8000」
夜間や休日に子どもの急な発熱、嘔吐、咳などがあり、「今すぐ病院へ行くべき?」「朝まで待っても大丈夫?」と迷うことがあります。
そのような場合に利用できるのが、厚生労働省の子ども医療電話相談事業「#8000」です。
#8000に電話すると、全国統一の短縮番号から、都道府県の相談窓口へつながり、子どもの症状について小児科医師・看護師などに相談できます。受診の必要性や家庭での対処方法などについて助言を受けることができます。
ただし、意識がない、呼吸が明らかに苦しい、唇が紫色など、緊急性が高い症状がある場合は、#8000への相談を待たず、119番通報を検討してください。
厚生労働省が2026年5月22日現在の情報として公表している実施状況では、#8000は47都道府県で実施されています。相談時間は自治体によって異なるため、利用時には最新の実施時間を確認してください。
6.季節の変わり目に家庭でチェックしたい5項目

- 水分:普段どおり、またはある程度水分が取れているか
- 尿:尿量や回数が明らかに減っていないか
- 呼吸:ゼーゼー、息苦しさ、陥没呼吸などがないか
- 意識・反応:呼びかけに普段どおり反応するか
- 顔色:顔色や唇の色に明らかな異常がないか
「熱が何℃あるか」だけではなく、これらを合わせて観察することが大切です。
おわりに
季節の変わり目には、気温・湿度などの環境変化に加え、感染症の流行、集団生活、アレルギーなど、さまざまな要因が重なって子どもの体調が変化することがあります。
「寒暖差のせい」と決めつけるのではなく、まずは子どもの水分摂取、呼吸、意識・反応、尿、顔色などを確認しましょう。
家庭では、子どもが快適に過ごせるよう衣服や室内環境を調整し、水分を無理なく摂らせます。経口補水液は、脱水状態に応じて適切に使用し、普段の水分補給として常用しないことが重要です。
市販薬については、「子どもだから少量」という自己判断をせず、製品ごとの対象年齢・用法・用量を確認してください。迷ったときは薬剤師や医師に相談しましょう。
そして、呼吸が苦しい、意識がおかしい、唇が紫色、けいれんがある、生後3か月未満の乳児の急な体調不良など、緊急性が疑われる場合には、家庭での様子見を続けないことが大切です。
夜間・休日に受診すべきか迷ったときは、厚生労働省の#8000(子ども医療電話相談)も活用してください。
本記事は、子どもの健康管理に関する一般的な情報提供を目的としています。個々の患者さんの診断・治療を目的としたものではありません。
市販薬を使用する際は、必ず最新の添付文書・説明書を確認し、対象年齢、用法・用量、使用上の注意を守ってください。複数の医薬品を使用する場合は、同じ成分が重複していないか薬剤師などに確認してください。
症状が悪化する場合、普段と明らかに様子が違う場合、または対応に迷う場合は、医療機関または#8000へ相談してください。呼吸困難、意識障害、チアノーゼ、けいれんなど緊急性の高い症状がある場合は、#8000を待たず119番通報を検討してください。
※本記事の商品情報・用法・対象年齢などは変更される可能性があります。実際に使用する際は、購入時点の添付文書・製品表示を確認してください。
参考文献・情報源
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」2026年5月22日現在の実施状況。
- 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」子ども(15歳以下)の救急症状に関する案内。
- 厚生労働省「子どもの症状は#8000」子ども医療電話相談事業に関する案内。
- 消費者庁「経口補水液について」および「ご存じですか?経口補水液の知識」。
- 大塚製薬工場「経口補水液オーエスワン」製品情報・許可表示。
- ライオン株式会社「小児用バファリンCII」製品情報・添付文書。
- ライオン株式会社「バファリン」製品Q&A、2026年4月1日公開・2026年8月26日更新。
- 東亜薬品/ジョンソン・エンド・ジョンソン系製品情報「タイレノールA」製品情報・添付文書。
- 第一三共ヘルスケア「カロナールA」製品情報・FAQ。
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ヘパリン類似物質外用製剤」添付文書。
- 健栄製薬「乾燥肌治療薬ヒルマイルド」製品情報。
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