⚠️ 免責事項:本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の医療診断・治療を推奨するものではありません。お子さんの症状については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。市販薬を使用する際は、用法・用量を必ずお守りください。
「もう3日もうんちが出ていない」「出るたびに泣いてしまう」「市販の薬を使っていいのか不安」など、子どもの便秘は保護者にとって心配が尽きないテーマです。
実は、小児科受診理由の約5%が便秘に関連する症状とされており(MSDマニュアル家庭版)、子どもの便秘は決して珍しくありません。一方で、誤った対処や放置によって慢性化するリスクも十分あります。
筆者の長男も便秘で悩み、実際に通院まで至っています。
この記事では、現役薬剤師が「便秘の正しい見極め方」「今すぐ受診すべき危険サイン」「市販薬の選び方」「食事・生活習慣のアドバイス」を、ガイドラインに基づいて解説します。
子どもの便秘とは?正常な排便の目安
便秘は「排便回数が少ない」だけで決まるものではありません。日本小児栄養消化器肝臓学会/日本小児消化管機能研究会「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン(2013年)」では、以下の状態が便秘の目安とされています。
- 排便頻度の低下:通常より2〜3日以上排便がない
- 便の性状の変化:硬い・排便時に痛みがある
- 便の大きさ:トイレが詰まるほど大きい塊
- 出血を伴う:便の外側に血液が付着している
【年齢ごとの「正常な排便」の目安】
- 新生児期:1日4回以上 / 軟らかい便
- 生後1年以内:1日2〜4回 / 母乳児は粒々のゆるめ便が正常
- 1歳以降:1日1〜2回(3〜4日に1回の子も) / 形のある軟らかい便
- 幼児〜学童期:週2〜3回以上あれば概ね正常 / 痛みなく排便できることが重要
(参考:MSDマニュアル家庭版 2025年3月改訂)
💡 薬剤師ポイント:「毎日出ていない=便秘」とは限りません。「痛みなく出せているか」「お腹が張っていないか」「食欲・元気はあるか」という総合的な観察が大切です。
ブリストルスケールで便の状態をチェック
便の形状を7段階で評価する国際的な指標「ブリストル・ストール・スケール」を使うと、便秘かどうかを客観的に把握できます。
タイプ1:コロコロとした硬い木の実状の塊 → 重度の便秘(早めに医師・薬剤師へ相談)
タイプ2:ゴツゴツしたソーセージ状 → 便秘気味(生活習慣の改善・受診を検討)
タイプ3:表面にひび割れのあるソーセージ状 → 正常
タイプ4:滑らかなソーセージ・蛇状 → 理想的
タイプ5:境界のはっきりした柔らかい半固形状 → 軟便気味(経過観察)
タイプ6:境界不明瞭な泥状便 → 下痢気味
タイプ7:固形物のない水様便 → 下痢(脱水に注意)
タイプ7:固形物のない水様便 → 下痢(脱水に注意)
💡 使い方のヒント:タイプ1・2が続いている場合は対処を検討してください。タイプ3・4が出ている間は、多少間隔が空いても過度に心配する必要はありません。
💡 使い方のヒント:タイプ1・2が続いている場合は対処を検討してください。タイプ3・4が出ている間は、多少間隔が空いても過度に心配する必要はありません。
便秘になりやすい3つの時期
日本小児栄養消化器肝臓学会のガイドラインでは、以下の3つの時期が特にリスクが高いとされています。
① 離乳食開始時期(生後5〜6か月頃)
腸内細菌の構成が変化し、便の性状が変わりやすい。水分・食物繊維の量が変動することで硬い便になりやすい時期です。
② トイレトレーニング時期(2〜3歳頃)
失敗への不安・叱責が排便恐怖を生みやすい。「我慢する習慣」がつくと便が直腸に長くとどまり悪循環が始まります。
③ 就学・環境変化時期(6歳頃〜)
学校でのトイレを嫌がってがまんする子が急増。生活リズムや運動量の変化も重なりやすい時期です。
便秘の原因と「負のスパイラル」のメカニズム
【機能性便秘と器質性便秘】
子どもの便秘の大半は「機能性便秘」です。腸や肛門の構造に異常はなく、生活習慣・排便習慣・心理的要因が主な原因です。
ごく少数ですが「器質性便秘」として、ヒルシュスプルング病・肛門狭窄・甲状腺機能低下症・食物アレルギーなどが原因となるケースがあります。後述のレッドフラッグで見逃しがないようにしてください。
【機能性便秘の3タイプ】
弛緩性便秘:筋力低下・運動不足・食物繊維不足が原因。便意を感じにくく、太く硬い便が出る。
痙攣性便秘:ストレス・自律神経の乱れが原因。便秘と下痢を繰り返す。コロコロ便。
直腸性便秘:便意の我慢・排便反射の減弱が原因。出口まで来ているのに出ない。
【なぜ悪化するのか:負のスパイラル】
硬い便が出て肛門が痛い
↓
「また痛いのが怖い」→ 便意を我慢するようになる
↓
直腸に便が長くとどまり、水分が吸収されてさらに硬化
↓
直腸が慢性的に拡張し、便意センサーが鈍くなる
↓
「便塞栓(fecal impaction)」へ発展 → 医療介入が必要な状態に
この負のスパイラルを断ち切るために、「痛まずにスッキリ出す成功体験を積み重ねる」ことが治療の根本原則です(日本小児栄養消化器肝臓学会ガイドライン)。
📝筆者体験談
長男は3歳を過ぎた頃には自宅での排泄は自身で済ませるようになっていました。
共働きで日々の忙しさで長男が長い間、排便をしていないことに気づけず、保育園から食欲がないという呼び出しがきっかけで受診して、便秘であることが発覚しました。
最初のきっかけが何だったのかは定かではありませんが、その時点で便意センサーが鈍くなっている状態になっていました。初回の治療(酸化マグネシウム)ではなかなか上手くいかず、浣腸も激しく嫌がり便塞栓への発展にまで至りました。
今すぐ受診!危険サイン(レッドフラッグ)
日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」では、器質的疾患を示唆する「警告徴候(レッドフラッグ)」が定義されています。以下のいずれかがある場合は、市販薬での対処をせず、すぐに小児科を受診してください。
🚨 新生児期・乳児期の異常
- 生後24〜48時間以内に胎便(初回の便)が出なかった
- 生後まもなくから頑固な便秘がある
🚨 全身状態・成長の異常
- 体重が増えない、または減少している
- 嘔吐を繰り返している
- 食欲がなく、ぐったりしている
🚨 腹部・肛門の局所症状
- お腹が異常に張っている(腹部膨満)
- お腹にしこりが触れる
- 肛門の位置や形状が明らかにおかしい(前方偏位など)
- 仙骨部(お尻の割れ目付近)に深いくぼみや毛が生えている
🚨 便の性状の異常
- 血便(鮮血だけでなく黒色便・粘血便も含む)
- 便秘と頻繁な下痢の混在
- 甲状腺の腫れがある
(出典:日本小児栄養消化器肝臓学会/日本小児消化管機能研究会「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」診断と治療社, 2013年)
⚠️ これらの徴候は、ヒルシュスプルング病・肛門狭窄・甲状腺機能低下症・二分脊椎・腸閉塞などの重篤な疾患のサインである可能性があります。
早めに相談を:イエローフラッグ
緊急ではないものの、生活習慣の改善だけでなく医師への相談を検討すべき状態です。
⚠️ 以下に当てはまる場合は早めに小児科へ
- 排便自立後なのに便失禁・漏便がある
- 便意があるときに足を交差させるなど「我慢姿勢」をとる
- 肛門周囲の皮膚がただれている・かゆがっている
- 生活習慣の改善だけでは便秘が続いている
- 肥満または低栄養が認められる
- 家族に慢性的な便秘症の人がいる
- 排便恐怖が強く、トイレを激しく嫌がる
- 夜尿(おねしょ)や尿失禁を伴っている
(出典:日本小児栄養消化器肝臓学会/日本小児消化管機能研究会「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」診断と治療社, 2013年)
薬剤師が教える市販薬の選び方
🌟 基本原則:まず「便を柔らかくすること」を優先する
腸を無理に動かす刺激性下剤より、便に水分を与えて出しやすくする非刺激性下剤が第一選択です。
「薬を使用するとクセになるのではないか?」と心配される方もいるかと思いますが、耐性を生じにくい薬もありますし、耐性を生じる薬は長期間連用しないことで対応は可能です。
必要に応じて薬を上手く使うことが重要です。「まず便を柔らかくしてスッキリ出す成功体験を積む」ことが治療の目標であり、適切な薬を適切な期間使うことが、最終的に薬を卒業できる近道でもあります。
■ ①非刺激性下剤(第一選択)
腸管粘膜を直接刺激しないため腹痛が起こりにくく、長期使用でも依存性・耐性が生じにくいのが特徴です。
ビオフェルミン酸化マグネシウム便秘薬
主成分:酸化マグネシウム+乳酸菌 / 5歳〜
便を柔らかくしながら腸内環境も整える。
コーラックMg
主成分:酸化マグネシウム / 5歳〜
錠剤が小さく飲みやすい。
マルツエキス
主成分:麦芽糖(マルトース) / 乳児〜(生後まもなくから)
甘みがあり飲ませやすい。腸内細菌のエサにもなる。
⚠️ 酸化マグネシウムの注意点:腎機能に問題がある場合は高マグネシウム血症のリスクがあります(2008年厚生労働省勧告)。長期使用する場合は医師・薬剤師にご相談ください。
■ ②刺激性下剤(短期・緊急時に限る)
即効性がありますが、長期連用は腸管神経への影響や依存性のリスクがあるため、短期・限定的な使用にとどめてください。
コーラックⅡ(ピンク錠)
主成分:ビサコジル / 11歳〜
即効性あり。腹痛を伴うことがある。連用は避ける。
■ ③浣腸(出口に詰まっている緊急時)
イチジク浣腸(各サイズ)
主成分:グリセリン / 0歳〜(サイズを要選択)
速やかな排出に有効。使用方法は必ず説明書を確認。
💡 よくある誤解「浣腸を使うと自力で出せなくなる?」
適切な使用であれば逆です。溜まった便を早期に排出することで直腸の慢性的な拡張を防ぎ、正常な排便反射の回復を助けます。ただし習慣的・頻回な使用は医師に相談してください。
■ ④整腸剤(腸内環境のサポート)
乳酸菌・ビフィズス菌を補い腸内環境を整えます。日本小児栄養消化器肝臓学会ガイドライン(2013年版)では「便秘への有効性の結論は出ていないが、症例によって有効な可能性がある」とされています。他の治療との併用や長期的なサポートとして検討できます。
🚫 市販薬を使ってはいけないケース:レッドフラッグに該当する症状がある場合、生後6か月未満の乳児、著しい腹部膨満がある場合は、必ず医師に相談してください。
病院では小児専用のポリエチレングリコール製剤(モビコール®)なども処方でき、体重に合わせた用量調整が可能です。市販薬で改善しない場合や長期化している場合は、受診して処方薬を検討する価値があります。
📝筆者体験談
長男は酸化マグネシウム、整腸剤では改善せず、浣腸は激しく嫌がる状態で治療が困難化していました。
その後、ポリエチレングリコール製剤を導入されるも排便ペースは改善せず便失禁が出現するという状態がしばらく続きました。
5歳を過ぎた頃、便秘が原因で嘔吐し、受診して浣腸を受けたことがありました。これをきっかけに、ポリエチレングリコール製剤を毎日しっかり続け、「2日間出なければ3日目に坐薬を使う」というルールで対応し始めました。すると、1週間を過ぎた頃から坐薬なしで自力排便できるようになってきたのです。
現在では毎日もしくは2日に1回のペースで排便できており、排便時には嬉しそうに報告してくれます。
※排便時には便の性状チェックを行うことにしてます
食事・生活習慣でできること
前提として:レッドフラッグ・イエローフラッグに該当する場合は、生活習慣の改善だけでなく医師の診察・治療が必要です。以下は機能性便秘に対するセルフケアの参考情報です。
■ ①食事:食物繊維とバランス食が基本
日本小児栄養消化器肝臓学会の患者向けパンフレットでは、1日の食物繊維摂取量の目安として「年齢(歳)+5g」(米国の推奨値)が紹介されています(例:7歳の子ども → 1日12g)。
【食物繊維が摂れる食材の例】
- さつまいも・里芋・じゃがいも:おやつ・みそ汁・煮物に
- りんご・バナナ・キウイ・プルーン:そのまま・ヨーグルトと合わせて
- ブロッコリー・かぼちゃ・にんじん:加熱して柔らかく・スープに
- 納豆・豆類・ひじき・わかめ:毎食の副菜として1品
- しめじ・しいたけなどきのこ類:汁物・炒め物に
※レタス・トマト・きゅうりは食物繊維含有量が少なく、便秘改善への寄与は限定的とされています。

ヨーグルトや乳酸菌飲料は効果は?
日本小児栄養消化器肝臓学会のガイドライン(2013年版)では「便秘への有効性の結論は出ていないが、症例によって有効な可能性がある」とされています。日常的に取り入れること自体は問題ありませんが、これだけで便秘が「治る」とは言い切れません。補助的なアプローチとして位置づけてください。
⚠️ 重要な注意点:便秘の子どもとそうでない子どもの食物繊維・水分摂取量に差が見られなかったとする研究報告もあります。特定食品を大量に食べさせるより、バランスのよい食事全体を整えることが基本です。
■ ②水分補給
水分不足は便を硬くする要因のひとつです。起床後にコップ1杯の水を飲む習慣は腸を刺激するきっかけになります。ただし水分補給「だけ」で便秘が改善するわけではなく、食事・運動・排便習慣との組み合わせが重要です。
■ ③排便習慣の確立(行動療法)
日本小児栄養消化器肝臓学会のガイドラインでは「毎日ゆとりのある時間帯にトイレに座る習慣をつけること」が推奨されています。
- 朝食後にトイレの時間を設ける(食後は腸の動きが活発になる)
- 便意を感じたらすぐトイレへ(学校でも我慢しないよう声かけを)
- 長時間座らせない(5分程度が目安)
- 出たら大いに褒める(ポジティブな体験が習慣化を促す)
- 叱らない・焦らせない(排便恐怖を悪化させます)
💡 トイレトレーニング中の保護者へ:ガイドラインでは「無理なトイレトレーニングは便秘を悪化させる、または原因になることがある」と明記されています。
■ ④運動・身体活動
身体を動かすことは腸の蠕動運動を促進します。外遊び・縄跳び・散歩など日常的な身体活動で十分です。座位時間が長い(ゲーム・動画視聴)子どもは意識的に身体を動かす機会を増やしましょう。

まとめ:薬剤師からのメッセージ
便秘の定義:回数だけでなく、硬さ・痛みの有無・腹部症状を総合して判断
大多数は機能性:生活習慣・排便習慣・心理的要因が主因。大半は器質的疾患なし
危険サインを見逃さない:レッドフラッグ(胎便遅延・血便・嘔吐・腹部膨満など)があれば速やかに受診
市販薬は「非刺激性」を第一選択:酸化マグネシウム系から開始。刺激性下剤を使用するとしても長期使用は避ける
食事はバランスが基本:特定食品より食物繊維を含む食材を毎食少しずつ取り入れる
排便は「怖くない」体験を積む:叱らない・我慢させない・朝食後トイレの習慣化・褒める
子どもの便秘治療で最も大切なのは、「排便は痛くない、怖くない」とお子さんに思わせてあげることです。適切なお薬を使って毎日スッキリ出る状態を数か月単位で継続することで、腸は本来の機能を取り戻していきます。「早く薬を止めさせなきゃ」と焦る必要はありません。
筆者自身、長男への対応で最も大事だと感じたことは、排便状況を報告してもらい排便があった際には一緒に喜ぶことでした。
市販薬の選び方に迷ったとき、症状が続いているときなどは一人で抱え込まず、かかりつけの小児科医や、ドラッグストアの薬剤師にいつでもご相談ください。
さいごに
本記事は公的機関・学術団体の資料に基づいた一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の診断・治療・薬品の使用を推奨するものではありません。市販薬を使用する際は、必ず添付文書をご確認ください。お子さんの症状については必ず医師または薬剤師にご相談ください。
📚 参考文献・情報源
- 日本小児栄養消化器肝臓学会/日本小児消化管機能研究会「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」診断と治療社, 2013年
- 日本小児栄養消化器肝臓学会 患者向けパンフレット「正しい知識で正しい治療を(詳細版)」https://jspghan.org/constipation/
- MSDマニュアル家庭版「小児の便秘」(2025年3月改訂)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」
- 大塚製薬株式会社「子どもの排便状況と食物繊維の摂取に関する実態調査」2011年
- 南山堂『子供の便秘はこう診る!親子のやる気を引き出す小児消化器科医のアプローチ』
- 日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」南江堂, 2023年

