やってはいけないことは焦って飲むこと
薬を飲み忘れた経験というのは多くの人が経験しているのではないでしょうか。飲み忘れに気づいた時、焦ってしまうかもしれません。薬を飲み忘れたときの対応はその医薬品の特性によっても変わってきます。つまり、その対応に画一的なものはなく、複数存在するということです。
ですが、原則的にやってはいけないことがあります。それは焦って安易にすぐに飲んだり2回分をまとめて飲むことです。
薬を飲み忘れたからといって、薬を焦ってすぐに飲んだり、2回分をまとめて飲んでも時は戻せません。飲み忘れたことを帳消しにすることが出来ないどころか、思わぬリスクを負うことになるかもしれません。
1回分の薬を飲み忘れるという事実が命に直結することはほとんどありません。落ち着いて対処することが安全への近道でしょう。
それでは薬の飲み忘れに気づいたときにどのように対処すればいいのか、薬剤師の視点で解説していきたいと思います。具体的に見ていきましょう。
※薬物治療における最終的な決定は自己判断だけで行わず、医師または薬剤師などの医療従事者と相談しながら進めるようにしてください
飲み忘れたときに考えること
薬を飲み忘れたときの対処法として考えるべきことは複数あります。
医薬品の開発時、臨床試験などで適切な1回量や1日量、服用のタイミング、1日の回数について検討された上で販売されます。薬を適切に使用するうえで、この決定された量やタイミングは安全性や有効性の観点でとても重要です。
指示通りに服用することは大切ですが、飲み忘れてしまうことは絶対に防げるわけでもありません。指示通りに飲めなかった場合に考えることを知っておくことで落ち着いた対処につなげてもらえればと思います。
考えることその1:1回に飲む量
薬を1回に飲む量というのは医薬品を開発する段階で、その安全かつ有効な量というのを臨床試験などの結果から決定しています。
その決定された量を基に実際に処方される量が決められるわけです。2回分をまとめて飲むということは実際に安全だと確認された量を超えて飲むことに繋がり、薬の効果が予想以上に出てしまったり、副作用という結果に繋ながりかねません。
薬を2回分まとめて飲んだからといって、過去の飲み忘れを取り戻すことは当然できないので、有効性が高まるとは限らず、リスクが増す可能性が高まる行為といえるでしょう。
考えることその2:飲むタイミング
薬にはそれぞれ飲むべきタイミングが存在するものが少なくありません。
薬を飲むタイミングは食事の前後、空腹時など食事に関わるものや起床時、朝昼夕、寝る前という時間帯に関わるものもあり、食事に関連するものと時間帯が組み合わさったものまであります。食事に関わるものに関しては直前や直後という考え方もあります。
決められたタイミングは効果を十分に発揮するためであったり、副作用が起こりにくいようにするためであったりと、その理由も多岐にわたります。
飲み忘れに気づいた時点で慌てて飲むことは、薬によって適したタイミングを逃す可能性があり、効果が十分に得られないどころか副作用のリスクも抱えてしまうため、慌てずに対応することが求められます。
考えることその3:服用する間隔
薬は、その種類によって1日1回でいいもの、1日2回、3回、それ以上と複数回飲む必要があるもの、逆に1週間に1回やそれ以上の間隔で服用するものと服用する感覚もさまざまあります。
これは薬が体の中から出ていく速度であったり、1回に飲める安全な量などによって決定されます。体へ入っていく速度や体から出ていく速度が緩やかである場合、回数は少なく済みます。1回に飲む量が多くても安全性が確認できていたり、効果が長く続くもの、症状を抑える時間帯が限られるものも同様に飲む回数を少なくすることが出来る因子となります。
薬を飲み忘れたことに気づいたタイミングによっては次回分の飲む時間との間隔が十分に保てない可能性もあります。十分に間隔を保っていないと体の中の薬の量が増えすぎて、副作用などのリスクになりかねないのです。
薬を複数飲んでいる場合、他の薬との間隔でも問題となる場合があるため注意が必要です。
誰にでも飲み忘れる可能性がある。事前にできることは?
どんなに飲み忘れないようにしていても絶対に飲み忘れないなんていう保証はできません。実際に飲み忘れたときに慌てないような準備、飲み忘れを少なくできるような対策にはどのようなことがあるのでしょうか。
事前に飲み忘れた際の対応を確認しておく
医師や薬剤師に事前に確認しておくことが最もシンプルかつ簡便な対応です。飲み忘れた際の効果は絶大です。
飲み忘れることを前提で質問することに躊躇することもあるかもしれないですが、もし飲み忘れることに不安があるのであれば、飲むタイミングは決まっているのか?1回の間隔はどの程度空ける必要があるのか?など確認しておくといいでしょう。
特に複数の医療機関から薬を処方してもらっている場合、飲み合わせの問題もあるのでその点も交えて確認ができるかもしれません。
服用回数の簡素化
薬を飲む回数というのは飲み忘れるリスクに直結します。1日3回飲むのが難しいと思われる状況なのに1日3回の薬を出された場合はすぐに相談した方がいいでしょう。
最初は大丈夫だと思っていても、明らかに飲み忘れてしまうことが多いという場合でも同様に相談が望ましいです。
相談することで服用回数が少なく済む薬への変更や1回の量を調整して回数を減らすなどの対応が可能なこともあります。
飲み忘れが多い状況なのに医師や薬剤師に伝えないことは、正確に飲めた状態での結果(検査結果など)であるという誤情報で伝わってしまうため、治療に影響が出る可能性があるので、飲み忘れについては隠さずに伝えることが重要です。
調剤方法の工夫
効果を十分に得るには飲む回数が1日3回であったり、4回であったりと複数回飲む必要がある薬も存在します。飲み忘れるからといって、簡単に回数を減らせないケースも存在します。
特に飲む薬の種類が多い場合、これも飲み忘れや飲み誤りのリスクが上昇します。
そのような場合の代表的な調剤方法の工夫として一包化調剤という選択肢があります。朝食後に3種類の薬を飲むという場合、通常であれば朝食後に自身で3種類の薬をそれぞれ自身でシートから取り出して服用する必要があるのですが、一包化調剤しているものであればその3種類がすでにまとまった状態で提供されているので、朝食後の一包を取り出せば3種類を間違いなく取り出せるのです。
一包化調剤は飲み忘れや飲み誤りを減らすための有効な手段の一つといえますが、デメリットになりうる要素も存在します。下記に示すような点も理解しつつ、医師や薬剤師に調剤方法の工夫を相談することは有効な手段となりえます。
安定性の低下
薬をシートから取り出すことで、通常の保管状況と異なる環境となります。そのため、原則短期間であれば問題はないですが、通常よりも劣化が早くなる場合があります。
識別性の低下
最近は錠剤自体に薬品名が記載されているものも少なくありませんが、錠剤やカプセルに直接印字されているものが数字やマークだけのものもまだまだ存在します。例えば、電話口で相談して中止する薬が出た場合にどの薬を中止すればいいのかわからないというような事態に発展する可能性があるのです。
また、分包された薬を飲むという行為が作業化してしまい、自身で飲んでいる薬への興味が薄れてしまう可能性があるということです。本来、治療の中心は薬を飲んでいる本人であるのに、これでは積極的な治療参加の妨げになりかねません。
待ち時間の増加
通常の調剤に比べて、時間が掛かる可能性があります。一包化調剤を行うには通常、専用の機械を使用しますが、実際に機械に薬をセットしたり、機械から出てきた薬の中身を確認するのに時間がとられるため、通常より時間が掛かることが多いです。
窓口負担の増加
服用時点ごとに一つにまとめるのに、手間がかかることやまとめる袋の材料費が発生することから保険薬局では調剤技術料として一包化加算というものが発生する場合があります。その分窓口負担が増える可能性があります。
迷ったときには専門家に相談を
薬を飲み忘れたときは、「慌てて対応しない」「まとめて飲まない」「不安な時には相談する」ことが基本です。
同じ「飲み忘れ」でも、薬の種類や状況によって対応は異なります。判断に迷った場合は、自己判断せず、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

さいごに
本記事は、一般的な医療・薬学情報の提供を目的としています。
実際の治療や服薬については、必ず医師または薬剤師にご相談ください。


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