薬の飲み合わせって気にしたことありませんか?薬を飲み始めて、それまで好きだった食べ物が制限されたらどうでしょう?
飲み合わせが悪い理由を知ることで納得できたり、解決策を考えることができるかもしれません。
薬を使ってから多くの過程を経て効果が出てきます。
その過程の中で複数の薬を使用していたり、食べ物が相互に影響することがあるのはご存知でしょうか。これは「飲み合わせ」とも表現されます。
薬同士または薬と食品の組み合わせによっては、効果が強く出すぎたり、逆に弱まったりすることがあります。
薬剤師の視点から、薬の飲み合わせについて具体的な事例を交えて解説していきます。
※薬物治療における最終的な決定は自己判断だけで行わず、医師または薬剤師などの医療従事者と相談しながら進めるようにしてください
薬の飲み合わせ(相互作用)とは
薬の飲み合わせ、専門的には「薬物相互作用」と呼ばれます。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が発行する「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」によれば、薬物相互作用により重篤な副作用が現れたり治療効果が減弱したりする場合があるため、複数の薬剤を処方する臨床現場では特に注意が必要とされています。
相互作用が起こる仕組み
薬物相互作用は大きく2つに分類されます。
薬物動態学的相互作用
薬が体に入り、出ていく過程は4つに分けられます。
吸収
薬が体の中に入る過程です。飲み薬や座薬では消化管から、塗り薬や貼り薬では皮膚から吸収されるように設計されています。局所的な作用となるように吸収されにくかったり、吸収されにくいよう設計されている薬もあります。
分布
薬が体の中で広がる過程です。この過程で薬は体の中のたんぱく質と一部結合します。結合する割合は薬によって異なります。
代謝
薬が分解される過程です。主に肝臓で行われますが、この過程で薬の効果が得られるようになったり、無効化されたりします。
排泄
薬が体の中から出される過程です。主に腎臓で行われます。
どの過程で相互作用は起こる?
すべての過程において相互作用が発生する可能性はあります。例えば、一方の薬が他の薬の分解を遅らせることで、血液中の薬の濃度が上昇します。
薬力学的相互作用
薬の効果そのものが増強されたり減弱されたりすることがあります。例えば、似た作用を持つ薬を併用すると効果が強まりすぎることがあります。
なぜ飲み合わせが問題になるのか
相互作用による具体的なリスクは以下が考えられます
- 効果が強まりすぎる: 副作用リスクの増大、重篤な健康被害
- 効果が弱まる: 治療効果の減弱、病状の悪化
- 予期しない作用: 新たな症状の出現
飲み合わせの具体例
1. ワルファリンと納豆・青汁・クロレラ
ワルファリンは血液を固まりにくくして血栓を防ぐ抗凝固薬です。心筋梗塞や脳梗塞の予防に使用されます。
ワルファリンはビタミンKの働きを妨げることで血液を固まりにくくします。しかし、納豆に含まれる納豆菌は腸内でビタミンKを産生するため、ワルファリンの効果を弱めてしまいます。
納豆は少量(100g、約1パック)でも腸の中でビタミンKの生合成を促進し、その影響は数日間続くため、ワルファリンが朝だから納豆は夜食べるというように時間をずらしても意味がありません。
同様に注意が必要な食品の一例
- 青汁
- クロレラ
実際にワルファリンを飲んでいる方が健康のためといって青汁を飲んでいたというケースも経験しました。健康のためと思って飲んでいたものが実は薬との飲み合わせが悪いとは思いもしなかったかもしれません。
尚、問題となるのは納豆菌が産生するビタミンKであるため、納豆の原料である大豆や、オクラや山芋などのねばねば食品は問題ありません。
2. グレープフルーツと一部の薬
アムロジピンなどのカルシウム拮抗薬と呼ばれる高血圧治療薬の一部やシクロスポリンなどの免疫抑制剤の一部をはじめとした薬がグレープフルーツジュースと相互作用を起こし、その数は決して少なくはありません。
グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分が、薬物の代謝を行う酵素の働きを阻害します。その結果、薬が分解されずに体内に残り、血中濃度が上昇して効果が強く出すぎたり、副作用が現れやすくなったりします。
グレープフルーツジュースの影響は摂取後十数時間持続し、完全に代謝酵素の働きが回復するには数日必要とされています。コップ1杯程度の少量でも影響があります。
同じ柑橘類でもフラノクマリン類を含むものと含まないものがあるので、注意が必要です。例えば、文旦やハッサクはフラノクマリン類を含むため、摂取を避けるのが望ましいでしょう。逆に温州みかんやレモンはフラノクマリン類を含まないため摂取しても影響はないものと考えられます。
柑橘類を加工した飲食料品にも注意が必要で、習慣的に摂取しているものであったり、新たに試したいものがあれば医師や薬剤師に都度相談することが重要です。
3. 市販薬同士の相互作用
風邪薬の重複成分
複数の風邪薬を同時に服用すると、解熱鎮痛成分(アセトアミノフェンなど)が重複して過剰摂取になる可能性があります。
胃薬と他の薬
一部の胃薬(制酸剤)は他の薬の吸収を妨げることがあります。服用時間をずらすなどの対応が必要です。
これまでに挙げた例は一例に過ぎず、処方された薬同士でも相互作用は起きますし、飲食物だけでなくタバコなどの嗜好品に影響される薬もあります。
年代別・状況別の注意点
相互作用が起こりやすい状況が生まれる場面の一例を紹介します。
高齢者の多剤併用
高齢者では複数の慢性疾患を抱えることが多く、処方薬の増加が避けられない場合があります。しかし、一般に6種類以上の薬剤を飲んでいる場合に薬物有害事象の発生が増加することが報告されています。
飲み合わせによる影響が、その一因となっている可能性は十分にありえます。
サプリメントを愛用している場合
処方された薬に関しては薬局などの医療機関が主体となり、お薬手帳などに反映されるため、何を飲んでるかの情報を明確に出来ている場合が少なくありません。
しかし、サプリメントや市販薬の情報は利用者お薬手帳に反映するという行為は利用者が率先して行わないと情報として反映されづらいことが多いです。そのため、飲み合わせが悪い組み合わせのものが見落とされがちになります。
飲み合わせを確認する方法
飲み合わせを確認するには正確な情報を薬に関する専門職である薬剤師に確認することが効果的です。
お薬手帳には処方された薬の名前、用量、服用期間などが記録されます。複数の医療機関を受診する場合でも、お薬手帳を提示することで薬剤師が飲み合わせをチェックできます。
お薬手帳を持ち歩くことで、出先でサプリメントや市販薬を購入する際の飲み合わせチェックを薬剤師にお願いすることも可能です。
また、お薬手帳に使用しているサプリメントや市販薬の情報を記載しておくと、新たな薬が処方される際にも医師や薬剤師に確認をしてもらうことが可能になります。
市販薬やサプリメントは名称が似ていても含有されている成分が異なるケースが少なくないので、お薬手帳に記しておく情報は可能な限り詳細に記しておくといいでしょう。

飲み合わせを回避する方法
処方された薬同士の問題であれば、医師または薬剤師に相談が必須です。サプリメントや市販薬また飲食物や嗜好品についても薬剤師への相談は必要です。
摂取時間をずらす
飲み合わせによる影響が短時間で済む場合にはこの手段を取ることが有用な場合があります。
薬の場合では飲む回数が増えることがあるので、飲み忘れの原因になる可能性もあるので注意が必要です。医師や薬剤師の指示のもとで対応することが重要です。
飲食物の場合ではどの程度時間を空ければ良いのか薬剤師に確認を行ってから実践してください。飲食物の摂取時間をずらすことは自身で可能ですが、薬を飲むタイミングは医師の指示のもとで行う必要があるので自己判断では行わないようにしましょう。
どちらか一方を別のものに変える
飲み合わせによる影響が長時間に及ぶものは時間をずらすという手段がとれません。また、時間をずらして摂取することが現実的ではない場合もあります。その場合はどちらか一方を別のものに変えるという手段があります。
処方薬同士の飲み合わせの場合、お薬手帳などで医師や薬剤師に情報が伝わっていれば通常は医療機関で確認されており、適切な対応がとられていますが、不安があれば相談してください
飲食物との飲み合わせに問題があり、避けるように言われた食べ物が食べたいという要望がある場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
その飲食物との影響がない薬への変更が可能か検討してもらえる可能性はあります。ただし、別の薬に変えることで薬の値段が上がったり、飲む回数が変わる可能性があることに留意が必要です。
薬を変えられない場合や多少の我慢ができる場合では、代替可能な飲食物はあるかを薬剤師に教えてもらいましょう。
さいごに
本記事は、一般的な医療・薬学情報の提供を目的としています。
実際の治療や服薬については、必ず医師または薬剤師にご相談ください。


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