【薬剤師視点でみる】HSC(ひといちばい敏感な子)の子育て!服薬支援と正しい知識

子育て

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「他の子が気にしない音で泣き出す」

「服のタグや特定の食感を極端に嫌がる」

そんなお子さんの様子に、「育て方が悪いのでは」と悩んでいませんか。

HSC(Highly Sensitive Child:ひといちばい敏感な子)は、環境から受ける刺激を比較的強く受け取り、深く処理する傾向を持つ子どもを説明する心理学的な概念です。医学的な診断名ではありません。

現在は、HSCを含む「環境感受性(environmental sensitivity)」を、病気かどうかという二分法ではなく、人によって程度が異なる特性として研究する考え方が広がっています。研究では、子どもの中に環境感受性の高い群・中間群・低い群が存在することが報告されています。

この記事では薬剤師である筆者が、HSCの概念と感覚過敏との関係、子どもの服薬を支援する際の具体的な工夫、そして甘草を含む漢方薬を使用する際に知っておきたい注意点について、厚生労働省・PMDAおよび査読済み研究を中心に整理します。


HSCとは?「ひといちばい敏感な子」を理解する

HSCという概念は、心理学者のエレイン・N・アーロン氏らによる研究・著作を背景に広く知られるようになりました。

現在の研究では、HSCを含む環境感受性は、周囲の環境から受ける影響の程度に関する個人差として捉えられています。2018年に発表された研究では、8~19歳の3,581人を対象としてHighly Sensitive Child(HSC)尺度が検討され、高感受性群は約20~35%でした。ただし、この数字は「HSCという病気の有病率」を示すものではありません。

また、2025年に発表された就学前児を対象とした研究でも、環境感受性の高い群が約22.5%確認されています。このように、研究によって対象年齢や測定方法が異なるため、「子どもの20~30%がHSCである」と一律に解釈することは適切ではありません。

アーロン氏が示した「DOES」という4つの特徴

アーロン氏はHSP・HSCの特徴を説明する枠組みとして、DOESという4つの特徴を示しています。これは医学的な診断基準ではなく、HSCという概念を理解するための説明モデルです。

項目 意味 特徴の例
D
Depth of processing
情報を深く処理する 行動する前にじっくり考える、変化を慎重に受け止める
O
Overstimulation
刺激が多いと圧倒されやすい 人混みや大きな音、長時間の活動で疲れやすい
E
Emotional responsiveness / Empathy
感情的な反応が強い、他者の感情に影響されやすい 映画や絵本などで強く感情移入する
S
Sensing the subtle
小さな変化や細かな違いに気づきやすい 部屋の変化、人の表情や声の変化などに気づく

ただし、これらの特徴の現れ方には個人差があります。「DOESのすべてに当てはまるからHSC」「一つ当てはまらないからHSCではない」と判断することはできません。

「感覚過敏」とHSCは同じもの?

HSCと聞くと、「音や光、服の感触などに敏感」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、感覚刺激への過敏さがあることだけでHSCと判断することはできません。

感覚刺激への反応の強さは、子どもによって程度が異なります。また、自閉スペクトラム症(ASD)など、発達特性の一部として感覚刺激への過敏性がみられる場合もあります。

一方、HSCはASDの診断名でもありません。HSCという概念だけからASDの有無を判断することもできません。感覚の問題によって園・学校生活や家庭生活に大きな支障がある場合、あるいはコミュニケーションや発達について気になる点がある場合には、小児科や発達を専門とする医療機関などに相談しましょう。

「扁桃体が過剰反応して癇癪が起こる」とは限らない

大きな音や人混みなどの刺激が重なると、子どもが泣いたり、怒ったり、その場から逃げようとしたりすることがあります。

脳では感覚情報の処理や注意、感情、自律神経反応などが複雑に関係しています。しかし、「HSCでは扁桃体が過剰に反応し、前頭前野が働かなくなるため癇癪が起こる」と単純化して説明することは、現在の研究からは適切ではありません。

環境感受性やSensory Processing Sensitivityについては、現在も神経・認知メカニズムが研究されている段階です。子どもの反応を「しつけが悪い」「わがまま」と決めつけず、どのような刺激が負担になっているのかを観察することが重要です。


薬剤師が伝える、感覚に敏感な子どもの服薬支援

子どもが薬を嫌がる理由の一つに、薬の苦味・におい・ざらつきなどがあります。特に感覚刺激を強く嫌がる子どもでは、薬そのものの味や口の中の感触が服薬の大きなハードルになることがあります。

ただし、薬を何かに混ぜたり、剤形を変更したりする方法は、薬によって適否が異なります。実際の薬については、自己判断せず薬剤師に確認してください。

粉薬を飲ませるときの工夫

  • 服薬補助ゼリーで薬を包んで飲ませる
  • 少量の水でペースト状にして、口の中の頬の内側などに塗ってから水などを飲ませる
  • 薬によっては、少量の飲食物に混ぜて服用できる場合がある
  • 服用する時間や手順をあらかじめ伝え、見通しを持たせる
  • 苦味などが強い薬では、薬剤師に相談して飲みやすい剤形や服用方法を検討する

PMDAも、粉薬を少量の水で練る方法や服薬補助ゼリーを利用する方法を紹介しています。一方、酸性の強い飲食物などでは薬のコーティングや効果に影響する場合があるため、薬ごとの確認が必要です。

特にミルクなど毎日の主食・主要な飲み物に薬を混ぜる方法は、薬を嫌いになる原因となる可能性があるため避けることが勧められています。


抑肝散は「漢方だから安全」とは限らない

抑肝散(よくかんさん)は、神経がたかぶる、怒りやすい、イライラするなどの症状を伴う神経症や不眠症のほか、小児夜泣き・小児疳症(神経過敏)などに用いられる漢方製剤があります。

ただし、抑肝散はHSCという気質を治療する薬ではありません。また、「漢方薬だから副作用がない」という考え方も適切ではありません。

抑肝散に含まれる甘草と偽アルドステロン症

抑肝散には甘草(カンゾウ)が含まれています。厚生労働省の資料では、抑肝散の構成生薬として甘草1.5gが示されています。

甘草に含まれるグリチルリチン酸は、過剰な摂取などによってナトリウム・水分の貯留やカリウム排泄の増加を起こし、偽アルドステロン症につながることがあります。

偽アルドステロン症では、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などがみられることがあります。また、低カリウム血症に伴って、脱力感、四肢の痙攣・麻痺などのミオパチーが起こることもあります。

重要なのは、「甘草を○gまでなら安全、○gを超えれば危険」と単純に判断できるわけではないという点です。厚生労働省の資料では、比較的少ない量で発症した例も報告されています。

複数の甘草含有製剤に注意

特に注意したいのが、複数の医薬品による甘草の重複です。

  • 複数の漢方薬
  • 甘草を含む市販薬
  • グリチルリチン酸を含む医薬品
  • その他、甘草を含む製品

抑肝散の添付文書でも、他の漢方製剤などを併用する場合には含有生薬の重複に注意するよう記載されています。また、甘草を含む製剤などとの併用によって偽アルドステロン症や低カリウム血症に伴うミオパチーが起こりやすくなることが記載されています。

漢方薬や市販薬を複数使用している場合は、お薬手帳を活用し、医師や薬剤師にすべての薬を伝えましょう。

こんな症状があれば医療機関へ

  • 手足のだるさや脱力感が強くなってきた
  • 筋肉痛や筋肉のこわばりがある
  • 手足のしびれなどがある
  • むくみが出てきた
  • 血圧が上昇した
  • 体重が急に増えた

これらの症状がある場合、特に甘草を含む漢方薬を服用している場合には、自己判断で服用を続けず、医師または薬剤師に相談してください。


聴覚過敏への対処:イヤーマフや耳栓という選択肢

大きな音や騒がしい環境が苦手な子どもでは、環境そのものを調整することが重要です。

例えば、騒がしい場所から一時的に離れる、静かな場所で休憩する、学校で座席や活動場所を工夫するなど、まずは刺激そのものを減らす環境調整を検討できます。

イヤーマフや耳栓などの聴覚保護具も選択肢の一つです。ただし、常に音を遮断することが適切とは限りません。学校生活では、教師の指示や周囲の安全情報を聞く必要があります。また、使用することで本人が必要な音まで聞き取りにくくなる可能性もあります。

Loop Engage Kids 2という選択肢

子ども向け製品の一例として、Loop Engage Kids 2があります。メーカーによると、6~12歳を対象とし、SNR 16dBのノイズ低減機能を備えています。また、90分までの使用を1回の目安とし、1日合計3時間以内の使用を推奨しています。

メーカーは、周囲の背景音を低減しながら会話を聞き取りやすくする設計と説明しています。ただし、実際の聞こえ方は装着状態や耳の形、周囲の音環境などによって異なります。

注意:本製品はHSCや聴覚過敏を治療する医療機器ではありません。製品の使用によって症状が改善することを保証するものでもありません。学校で使用する場合は、担任の先生や学校側に事前に相談しましょう。

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家庭でできる7つの関わり方

HSCという概念を子育てに取り入れる場合、大切なのは「敏感さをなくす」ことではなく、本人が刺激を調整しながら生活できる環境をつくることです。

  1. 「気にしすぎ」と決めつけず、本人が感じている負担を聞く
  2. 刺激が多い場所では、休憩や静かな場所に移動できるようにする
  3. 予定や変更をできる範囲で事前に伝える
  4. 服の素材やタグなど、本人が苦手とする刺激を把握する
  5. 疲労が蓄積する前に休憩できるようにする
  6. 園や学校と情報を共有し、必要な環境調整を相談する
  7. 困りごとが強い場合は、HSCという言葉だけで判断せず専門家に相談する

これらは「HSCだから必ず行うべき対応」という医学的な治療プログラムではありません。子どもの特性や生活上の困りごとに応じて、無理のない範囲で環境を調整するための考え方です。


まとめ

  • HSCは医学的な診断名ではなく、子どもの環境感受性を説明する心理学的な概念です。
  • 研究では環境感受性には個人差があり、高感受性群が一定割合存在することが示されています。
  • DOESはHSCを理解するための説明モデルであり、医学的な診断基準ではありません。
  • HSCとASDは同じ概念ではなく、HSCだけからASDの有無を判断することはできません。
  • 薬の苦味・におい・ざらつきなどが服薬の妨げになる場合は、服薬補助ゼリーなどを利用できることがあります。
  • 薬を飲食物に混ぜる方法は薬によって適否が異なるため、薬剤師に確認しましょう。
  • 抑肝散など甘草を含む漢方薬では、偽アルドステロン症などの副作用に注意が必要です。
  • 複数の漢方薬や市販薬を併用する場合は、甘草などの生薬の重複に注意しましょう。
  • 騒音への対応では、イヤーマフや耳栓だけでなく、静かな場所への移動など環境調整も重要です。

HSCという言葉は、子どもの「困った行動」を理解するための一つの視点になり得ます。ただし、HSCという概念だけで医学的な診断や治療の必要性を判断することはできません。

音・光・衣服・食感などへの過敏さによって日常生活に大きな支障がある場合や、発達・コミュニケーションについて心配な場合には、小児科や発達を専門とする医療機関などに相談してください。


医療に関する注意

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療を推奨するものではありません。薬の使用方法や剤形変更、飲食物との併用については、薬剤ごとに注意点が異なります。実際の服薬については、医師または薬剤師にご相談ください。

参考文献・情報源

  1. Pluess M, Assary E, Lionetti F, et al. Environmental sensitivity in children: Development of the Highly Sensitive Child Scale and identification of sensitivity groups. Developmental Psychology. 2018;54(1):51-70.
  2. Lionetti F, Aron EN, Aron A, et al. Dandelion, tulip and orchid: Evidence for the existence of low-sensitive, medium-sensitive and high-sensitive individuals. Translational Psychiatry. 2018;8:24.
  3. Greven CU, Lionetti F, Booth C, Aron EN, Fox E, Schendan HE, et al. Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda. Neuroscience & Biobehavioral Reviews. 2019;98:287-305.
  4. Weyn S, Van Leeuwen K, Pluess M, et al. Improving the Measurement of Environmental Sensitivity in Children and Adolescents: The Highly Sensitive Child Scale-21 Item Version.
  5. 厚生労働省「グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」
  6. 厚生労働省「一般用漢方製剤の添付文書等に記載する使用上の注意の一部改正について」
  7. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「抑肝散」医療用医薬品添付文書
  8. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「赤ちゃんに医師から処方された粉薬を飲ませるよい方法を教えてください」
  9. Loop Japan「Engage Kids 2」製品情報
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