【薬剤師が解説】ワクチンって本当に必要?予防接種で期待できる効果とその意義

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「ワクチンって本当に必要なの?」「副反応が心配で迷っている」など、そんな疑問を持つ方のために薬剤師の立場から厚生労働省・国立健康危機管理研究機構(JIHS)などの一次情報源をもとに解説します。

なお本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の接種推奨ではありません。接種の要否はかかりつけ医・薬剤師にご相談ください。

ワクチンが免疫をつくる仕組み

感染症にかかると私たちの体は病原体(ウイルス・細菌)に対する「免疫」を形成します。ワクチンとは、実際に発症しなくても人工的に免疫を誘導する医薬品です。

厚生労働省の分類によると、日本で使用されるワクチンは生ワクチン、不活化ワクチン、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、トキソイドに大別されます。

不活化ワクチン、mRNAワクチン、トキソイドは、感染性のある病原体そのものを使用しないため、接種によってその感染症を発病することはありません。

日本の定期接種制度——A類・B類とは何か

日本の予防接種は予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づき、大きく「定期接種」と「任意接種」に分かれます。定期接種は公費負担(一部自己負担あり)で任意接種は自費負担(全額自己負担)となります。定期接種はさらに疾病の性質により「A類疾病」と「B類疾病」に区分されています。

A類疾病は個人予防とともに集団予防、重篤な疾患の予防に重点をおき、本人(保護者)に接種を受けるように努める義務(努力義務)があり、国は接種を積極的に勧奨しています。B類疾病は主に個人予防に重点をおき、本人に努力義務はありません。

なお2024年10月より、新型コロナワクチンはB類疾病の定期接種として位置づけられ、65歳以上および60〜64歳で一定の障害を有する方が対象となっています。秋冬に自治体が実施し、各自治体が設定した自己負担額がかかります(低所得者を除く)。

最近の話題

帯状疱疹ワクチン

2025年4月1日から、帯状疱疹ワクチンが予防接種法のB類疾病として定期接種の対象疾患に位置づけられました。これにより、対象者は一部公費負担で接種を受けられるようになりました。

2025年度 帯状疱疹ワクチン定期接種の対象者

  • 65歳の方(その年度内に65歳になる方)
  • 60〜64歳で、HIVによる免疫機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な方
  • 2025〜2029年度の5年間の経過措置として、その年度に70・75・80・85・90・95・100歳になる方(100歳以上は2025年度に限り全員対象)

接種できるワクチンの種類

帯状疱疹のワクチンは2種類存在します。ワクチンの種類は生ワクチンと不活化(組み換え)ワクチンです。

生ワクチンは皮下注射で1回の投与で終了します。1回の負担額が低い一方で有効性や効果の持続期間は不活化ワクチンに劣るとされています。免疫不全を有する方など、一部受けられない条件が存在します。

不活化ワクチンは筋肉内注射(皮下注射よりも注射部位痛が出やすい)で2回の接種が必要となります。2回とも助成を受けるには、2回とも助成期間内に打てるようなスケジュール調整が必要です。

2種のワクチンを交互に接種すること(交互接種)は認められていません。どちらを選ぶかは医師と相談のうえ決定してください。また公費助成となる定期接種の機会は生涯1回のみですが、医学的に必要である場合には任意接種をすることも検討されます。

インフルエンザワクチン

2025/26シーズン(令和7年度)から、国内のインフルエンザHAワクチンが4価から3価に変更されました。B型山形系統ウイルスが2020年以降、世界的に検出されない状況が続いていることを受け、WHOの推奨に基づき日本も3価(A型2株+B型ビクトリア系統1株)に移行しました。

また2024年9月には経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」(適応:2歳以上19歳未満、1回接種)が新たに発売されました。

さらに2024年12月には60歳以上向けの高用量HAワクチン「エフルエルダ」(通常の約4倍の抗原量)が承認されています。現時点で販売開始とはなっておらず、定期接種の対象となるかは不透明ですが、今後の動きには注目が必要です。

肺炎球菌ワクチン

2026年4月1日から65歳に定期接種に用いるワクチンが23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)から、沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に変更になりました。

ここで用いられている「価」とは種類の数を表しています。肺炎球菌と言ってもその肺炎球菌の中に複数の種類が存在します。(犬に柴犬、チワワ、コーギーなどの様々な種が存在するイメージです)

肺炎球菌の種類は100を超えますが、侵襲性肺炎球菌感染症を起こすものはその一部とされています。今回の変更ではカバーする種類は23から20へと減っていますが、より感染症発生の報告が多いものをカバーできるようになっています。

また、ワクチン接種後の免疫を得る機序として、免疫記憶が形成できるワクチンへの変更となっています。

妊娠中に受けることのできるワクチンやがん予防になるワクチンも

基本的にワクチンは自身の「感染症」の発症予防、重症化回避などを目的に使用されてきました。今は「これから生まれてくる我が子のため」、「がん予防のため」となるワクチンも出てきています。

RSウイルスワクチンは任意接種ではありますが、妊婦のうちに接種することで、胎児の段階での受動免疫で新生児、乳児期の感染予防を目的としています。RSウイルスは新生児、乳児のほか、高齢者にとってもリスクの高い感染症であるため高齢者の接種も可能です。

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは感染すると子宮頚がんを起こしやすい型の感染予防を目的としています。

ワクチンの有効性の数字をどう読むか

ワクチンの「有効性」を示す指標にワクチン有効率(VE: Vaccine Effectiveness)があります。

VEとは「ワクチンを接種しなかった人が病気にかかるリスクを基準とした場合、接種した人のリスクが相対的にどれだけ減少したか」を示す指標です。

「有効率60%」の正しい読み方

厚生労働省は具体的な例を用いて次のように説明しています。

ワクチンを接種しなかった100人のうち30人がインフルエンザを発病(発病率30%)するのに対し、接種した200人のうち24人が発病(発病率12%)。この差(30% → 12%)が相対的に60%の低下にあたる。

つまり「接種した人の60%が感染を防げる」という意味ではありません。ワクチンは感染を完全に防ぐものではなく、発病・重症化・死亡を抑えることに主な意義があります

副反応の正しい理解

よくみられる副反応(数日以内に回復することが多い)

接種部位の痛み・腫れ・発赤、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉・関節の痛みなどが報告されています。これらは免疫が反応している結果としてみられることがあり、通常数日以内に自然に改善します。例え、このような反応が起こらずとも通常は免疫は獲得されます。

まれにみられる重篤な副反応

アナフィラキシー:急性の重篤なアレルギー反応。接種後30分間は接種医療機関内で様子を見ることを推奨します。

新型コロナmRNAワクチン後の心筋炎・心膜炎:若年男性(特に2回目以降の接種後)での報告例が確認されており、厚生科学審議会副反応検討部会で継続的にモニタリングされています。

帯状疱疹組換えワクチン(シングリックス):ショック・アナフィラキシー・ギラン・バレー症候群の報告があります。

「副反応疑い報告」と「因果関係」は別物

副反応疑い報告制度では、ワクチンとの因果関係が不明な事例も広く収集・公表されています。「接種後に生じた事象」と「ワクチンが原因の事象」は異なる概念であり、因果関係の評価は疫学的手法により専門家が判断します。

ベネフィットとリスクの考え方

厚生労働省は「ワクチン接種後には副反応を生じることがあり、副反応をなくすことは困難」としながらも、「接種によって得られる利益(ベネフィット)と副反応などのリスクを比較して接種の是非を判断する必要がある」と明示しています。

薬学的にいうと、これは「リスク・ベネフィット比(benefit-risk ratio)」の考え方です。医薬品・医療行為には一定のリスクが存在しますが、それは「感染した場合のリスク」との比較で評価されます。

個人の判断においては、年齢・基礎疾患・生活環境・アレルギー歴などを考慮したうえで、主治医・かかりつけ薬剤師と相談することが重要です。

健康被害救済制度について

定期接種において、接種が原因と認定された健康被害に対しては予防接種法に基づく救済制度(医療費・医療手当・障害年金・死亡一時金等の給付)が設けられています。申請はお住まいの市区町村窓口で受け付けています。

任意接種による健康被害については、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品副作用被害救済制度が対象となります。

なお、副反応疑い報告制度における「ワクチンとの因果関係の評価(医学・薬学的判断)」と、健康被害救済制度における「認定要件(厳密な医学的因果関係を必要としない)」は評価基準が異なります。

さいごに

本記事は、一般的な医療・薬学情報の提供を目的としています。

実際の接種の要否、適否についてはかかりつけ医や薬剤師に相談してください。

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