体調を崩したり健康診断で引っ掛かり、病院で診察を受けた後に薬局で薬を受け取る。ここまででも多くの時間を費やしたのに、ここから薬を正しく服用するという管理が始まる…人によってはうんざりしてしまうかもしれませんね。
薬を飲むことを義務と感じてしまうことで、とても窮屈に感じてしまうこともあるでしょう。それは薬を飲む理由を「病気というマイナスをゼロに戻す作業」ととらえてしまっているからではないでしょうか。
しかし、薬を飲むことの本質を捉え直すと薬を飲む理由は「病気に奪われそうな本来の自分の日常を取り返すこと」と、このように考えられないでしょうか?
薬を飲む理由について薬剤師の視点から説明をしていきます。薬を飲む理由についてより具体化して薬を飲む意欲を高めてみませんか?
※薬物治療における最終的な決定は自己判断だけで行わず、医師または薬剤師などの医療従事者と相談しながら進めるようにしてください
薬を飲む理由は1つではない
薬というのは大雑把に言うと、自身の不調を改善したり健康のために使うものであるという認識は誰もが持っているのではないでしょうか。
各個人の不調の改善や健康のために使用されるための薬ですが、その種類は医療用医薬品だけでも1万以上に及びます。
薬は症状、疾患などに合わせて処方されるものであり、例えば「アレルギー性鼻炎」の場合であれば「アレルギー症状を抑える」であったり、「高血圧」であれば「血圧を下げる」という細かい個別性の高い理由があります。
ここまで細分化した理由を述べていっても仕方がないと思うので、大きく4つくらいの理由に分けてみようと思います。

薬を飲む理由その1:今の症状を緩和する
多くの方が薬を服用する最大の動機として挙げるのは、「現在抱えている身体の不調を改善したい」という願望です。例えば、頭痛や腹痛、発熱など、日常生活に支障をきたす症状に対して、薬は迅速かつ効果的な解決策となります。
これらの不調は、私たちの生活の質を低下させるだけでなく、精神的なストレスや不安も引き起こすことがあります。そのため、適切な薬物療法によって症状を緩和し、日常の活動や仕事に集中できる状態へと回復させることが求められます。
薬を服用する理由は単なる一時的な症状の緩和だけでなく、自分自身が本来持つべき健康な状態や生活の質を取り戻すために不可欠な手段であるといえるでしょう。
薬を飲む理由その2:病気の原因や進行因子に作用する
体に起きている痛みなどの異常な症状というのは体の中に異常な状態が起こっているからです。症状自体を抑えられたとしても、その根本となる原因に対する治療が行われない場合、症状の再発や悪化、合併症のリスクが高まることが知られています。薬にはその原因を除く手助けをする効果も期待できるのです。
ヒトをはじめとする動物には自己治癒能力が備わっています。その生体が本来持つ回復機構(免疫反応や修復機構)を、医学的に補助する役割を薬が担うわけです。細菌による感染症などでは症状を抑える対症療法と自己治癒能力だけでは疾患を治癒するまでには不十分な場合がありますが、そこに薬を服用することで疾患の治癒まで導くことが可能になります。
すべての病気で原因を完全に除去できるわけではありませんが、薬を飲むことで症状の緩和だけでなく症状の原因を取り除くことが可能となり、より早期に疾患の改善や長期的なコントロールにつなげることが出来るのです。
薬を飲む理由その3:今ある症状の進行を遅らせる
一度、疾病が発症した場合、完全な治癒が難しい疾患も存在します。心不全などのこうした疾患においては、適切な治療や薬物療法を行うことによって、症状の悪化や疾患の進行速度を抑えることが可能となります。
薬の服用を怠ると、疾患は自然に進行し、身体的・精神的な負担が増大する恐れがあります。一方で、継続的な薬物療法により、病気の進行を遅らせることができれば、日常生活の質を維持しやすくなる可能性が広がります。
薬は単なる症状緩和だけでなく、疾病の進行をコントロールし、自身の健康状態を長期的に守るための重要な手段となります。適切な医師の指導のもとで薬を使用することは、自分自身の未来をより良いものにするための賢明な選択と言えるでしょう。
薬を飲む理由その4:未来の自分を疾患から守る
実際に症状が出ていなくても、健康診断などで検査値の異常が発見されて薬を飲むことになるかもしれません。高血圧や糖尿病では重度にならないと症状を自覚しない場合も少なくないですが、血圧や血糖値が高いままの状態であると徐々に体にダメージを追うことになります。薬を正しく服用せずに放置することで、新たな合併症が起こることもあるのです。薬物治療を行うことで合併症予防に繋げることが可能となります。
症状が乏しい状況だと特に薬の効果を実感しづらく、薬を飲むことを苦痛に感じてしまいやすい状況になりえます。そのため、薬を飲む意義を見失い治療中断に繋がりかねません。しかし、根気強く薬を飲み続け、検査値などの改善が得られれば未来に起こりうる合併症のリスクを下げる可能性が高まります。
薬はただ単に、検査値を改善するだけなく、未来に起こりうる合併症の発生をコントロールする手段となりえます。合併症の発症を防ぐことや遅らすことが出来れば、自身の未来の選択肢は大きく広がり、自由度は増すでしょう。実現したいことを諦めずに達成するためにも、正しく薬物治療を続けることはとても重要です。
薬を飲むことで得られるもの
人には人それぞれの人生があります。趣味、家族との時間、仕事など大事にしていることやそのバランスも人によって異なることでしょう。
薬を正しく使用することで、自身の大事にしていることに費やせる時間を増やしたり、質を高めることが実現可能になります。
頭痛などの症状を抑えられることで仕事に打ち込むことが出来たり、症状悪化を防ぐことで入院に至ることを回避し、家族との時間を増やすことが出来たりと薬がもたらす効果は自身の体にとどまらず、自身の周りにも影響を与えることが出来るのです。
薬は万能ではないことに注意
ここまで、薬を飲むメリットを前面に押し出して書いてきましたが、薬は万能ではないことに注意が必要です。
例えば、副作用が起こる可能性があることに留意しなくてはいけません。
副作用は誰にでも起こるものではないです。ですが絶対に起こらないという保証はありません。大事なのは起こりうる副作用を理解して、起こった時に適切に対応することです。
また、薬を飲んだからといって全員に等しい効果が得られないという点にも注意が必要です。薬への反応性は人それぞれです。効果が得られないと医師などが判断した場合、薬の種類を変更したり量を変更するなどして対応していきます。
生活基盤となる食事、睡眠、運動などの内容を疎かにしていれば健康維持や症状緩和が難しくなる可能性は高まることに注意が必要です。薬は多くの場合、健康維持や症状緩和のサポートとして使用されるべきものであるという認識が必要です。
薬を飲む最終決断は自分
これまで述べた通り、薬を飲む理由は人それぞれで、薬を飲むことによって得られることも人それぞれです。
数時間後、数年後とその長さも様々ですが自分が好きな時間を過ごす姿を想像してみましょう。その姿を守るのが、今目の前にある処方された薬になる可能性は大いにあります。
医師などから提示された薬物治療という選択肢について、自身が薬物治療を開始する理由を明確にし、デメリットについても理解した上で納得して積極的に治療に向き合うことが大切です。
さいごに
本記事は、一般的な医療・薬学情報の提供を目的としています。
実際の治療や服薬については、必ず医師または薬剤師にご相談ください。



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