【薬剤師が教える】自身ができる疾患への対応!セルフメディケーションの有効性と限界点

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「頭が痛いけど病院に行くほどでもない」「風邪っぽいけど病院に行く暇がない」そんなとき、ドラッグストアで市販薬を選ぶ機会は選択肢としてあってもいいかもしれません。しかし、棚に並ぶ数百種類の薬の中から自分に合ったものを安全に選ぶのは意外と難しいものです。

本記事では、薬剤師の立場から、OTC医薬品の法的分類・症状別の選び方・添付文書の読み方・受診が必要なサインまでを解説します。

※薬物治療における最終的な決定は自己判断だけで行わず、医師または薬剤師などの医療従事者と相談しながら進めるようにしてください

OTC医薬品とは?法律で定められた区分

「市販薬」「一般用医薬品」「OTC医薬品(Over The Counter drugs)」と呼ばれるものは、いずれも処方箋なしに薬局やドラッグストアで購入できる医薬品を指します。日本では薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づき、リスクの程度によって以下の区分に分類されています。

要指導医薬品

購入は薬剤師による対面での情報提供が法律で義務付けられており、インターネット販売は許可されていません。発売から一定期間経過することで一般用医薬品へ移行するものもあります。

一般用医薬品

要指導医薬品とは異なり、インターネット販売が可能です。一般用医薬品の中でも以下の3つの区分に分類されます。

第一類医薬品

リスクが最も高く、薬剤師による書面等での情報提供が義務となっています。

第二類医薬品

リスクは比較的高く、薬剤師または登録販売者による情報提供が努力義務となっています。

第三類医薬品

リスクは比較的低く、薬剤師または登録販売者が対応しますが情報提供の義務は規定されていません。ビタミン剤、整腸剤、目薬(一部)などが該当します。

それぞれの区分毎に陳列は分けられています。目的の医薬品が見つからない場合、何を選択すればいいのかわからない場合には薬剤師や登録販売者などへ相談するようにしましょう。

症状別の選び方の基本原則

OTC医薬品を正しく選ぶためには、まず「今の症状を正確に把握する」ことが最も重要です。複数の症状がある場合に配合剤(いわゆる「総合感冒薬」など)を選ぶか、単成分薬を選ぶかの判断は効果と副作用の両面から大切な選択になります。

解熱鎮痛薬:3つの主成分を比較する

代表的な成分はアセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムの3つです。それぞれ薬理作用、対象者、注意点が異なります。

アセトアミノフェン

解熱・鎮痛作用がありますが、末梢への抗炎症作用は弱いです。妊婦・授乳中・小児・高齢者・胃が弱い人でも比較的使用しやすいですが、肝機能障害者、アルコール多飲者(肝毒性リスク)では注意が必要です。

イブプロフェン

アセトアミノフェンと異なる作用機序で解熱・鎮痛・抗炎症作用を有します。炎症を伴う痛み(生理痛・歯痛など)に適しています。消化性潰瘍のある人、腎機能障害者では注意が必要でアスピリン喘息の経験がある方、妊娠後期の方は使用できません。
製剤により小児使用可能なものもありますが、年齢制限は製品ごとに異なるため必ず添付文書を確認してください。

ロキソプロフェン

作用機序や効果はイブプロフェン同様ですが、より速やかで強い作用が期待できます。国内での使用実績が豊富な医薬品です。消化性潰瘍のある人、腎機能障害者では注意が必要でアスピリン喘息の経験がある方、妊娠後期の方や15歳未満の子供では使用できません。

感冒薬:総合感冒薬 vs 単成分薬

風邪の症状といえどその症状の出方は様々で発熱、頭痛や咽頭痛、鼻水、咳、痰などありますが同時に全てが出るとは限りません。1つの症状のみの場合もあれば上記の症状がいくつか組み合わさるものから全て出る場合もあります。総合感冒薬は症状緩和が目的であり、ウイルス感染そのものを治療するものではありません。

総合感冒薬(配合剤)は複数の有効成分を配合しているため、飲む回数を減らせるという点では便利なように思えますが「今出ていない症状にも薬を飲む」ことになります。くしゃみ・鼻水がなければ、抗ヒスタミン薬成分(クロルフェニラミンマレイン酸塩など)を含む製品を選ぶ必要はなく、むしろ眠気・口の渇きなどの副作用を避けるために、出ている症状だけに対応する単成分薬を組み合わせるのが薬剤師としての基本的な推奨です。

胃腸薬:症状で選ぶ薬が大きく変わる

「お腹が痛い」という症状ひとつでも、過剰な胃酸分泌による痛みなのか、胃の動きが悪いことによる不快感なのかで、選ぶ薬は大きく異なります。

胸やけや呑酸の場合はH2ブロッカーと言われる分類の成分や炭酸水素ナトリウム系制酸薬が適していると考えられます。

食後の膨満感や消化不良であれば、消化酵素配合の消化薬・健胃薬が勧められるケースが多いです。

急性の下痢の場合、感染が原因であると下痢を止める薬は逆効果になる可能性があるため、安易には選択できません。特に発熱や血便を伴う感染性下痢では使用を避けるべきです。血便もなく、日常生活に支障がなかったり、激しい腹痛や高熱などもなく水分摂取が可能であれば整腸剤や水分摂取(必要に応じて経口補水液など)で様子を見ることも選択肢の一つです。

添付文書の正しい読み方

OTC医薬品には必ず添付文書が同梱されています。読む優先順位を知っておくと効率よく確認できます。

PMDAのウェブサイトでも公開されているため、検索が可能です。 最優先に確認したいことは禁忌・禁止事項です。添付文書には「次の人は使用しないこと」として記されています。自分が該当しないか確認してください。

次に確認することは「相談すること」の項目です。持病・妊娠・授乳・他の薬の使用や薬などでのアレルギー・副作用歴がある場合は購入前に薬剤師へ 必ず確認するようにしてください。

用法・用量、年齢ごとの用量・服用間隔・1日の最大回数を厳守するようにしてください。

使用上の注意の副作用についても必ず確認しておきましょう。初期症状を把握し、出現時の対応を確認しておいてください。

保管及び取扱い上の注意を確認の上で適切に保管することも心掛けましょう。

市販薬を使う際に必ず確認すべき5つのポイント

① 他の薬との飲み合わせ(薬物相互作用)

複数の薬を同時に使用する際には、薬物相互作用に注意が必要です。

注意すべき組み合わせの例

・アルミニウム・マグネシウム含有製剤(胃薬)+ キノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬(処方薬) → レボフロキサシンの吸収低下のため、レボフロキサシンの効果を減弱させる可能性あり
・酸化マグネシウム(便秘薬)+ 活性型ビタミンD製剤(処方薬)→ マグネシウムの消化管吸収促進などのため高マグネシウム血症のリスク増加
・イブプロフェン・ロキソプロフェン + 利尿薬、ACE阻害薬またはアルドステロン受容体拮抗薬(処方薬) → 急性腎障害のリスク増加

処方薬を服用中の方は、OTC医薬品を購入する前に必ず薬剤師または担当医に相談してください。お薬手帳に正確な名称を記録しておくことも有効な手段となります。

② アレルギー、副作用歴の確認

過去に薬で発疹、蕁麻疹、呼吸困難などを経験したことがある場合は、その薬の成分(一般名)を把握し、同系統の成分を含む製品を避けることが重要です。お薬手帳にアレルギー情報を記載しておくと薬剤師への相談がスムーズになります。

③ 年齢・体重への対応

小児への使用については特に注意が必要です。

アスピリンを例に挙げると15歳未満の水痘・インフルエンザ患者には処方薬であっても原則禁忌です。市販薬では診断自体が困難なため、15歳未満の方は服用しないでください。(ライ症候群のリスク)

多くのOTC医薬品は「15歳未満」「7歳未満」「5歳未満」「2歳未満」などで使用可否が分かれています。年齢制限は添付文書で必ず確認してください。

体重が著しく低い場合には用量調整が必要になることがあります。

④ 妊娠・授乳中の使用

  • 妊娠後期(妊娠28週以降)のNSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)は禁忌です(動脈管早期閉鎖のリスク)
  • 妊娠中に比較的安全とされるのはアセトアミノフェンですが、服用前に医師・薬剤師に相談することを推奨します
  • 授乳中の薬の安全性情報は国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」が参考になります。

⑤ 使用期間の目安

市販薬を服用しても症状が改善しない場合はありえます。使用開始後2〜3日程度を目処に症状の改善がなかったり、明らかな症状の悪化などがあれば医療機関の受診を検討しましょう。

市販薬に含まれている痛み止め(解熱鎮痛薬)を頭痛に対して月15日以上、3ヶ月以上使い続けると「薬物乱用頭痛(Medication Overuse Headache)」を引き起こすことが知られています。市販の頭痛薬の長期連用は避けるようにしましょう。

受診すべき「Red flag symptoms(警告症状)」

セルフメディケーションで最も重要な判断は「医療機関を受診すべきかどうか」です。以下の症状が見られる場合は、市販薬での対応を優先させず、速やかに受診してください。

胸痛・呼吸困難・意識障害 の場合は即刻(救急) 受診をするようにしましょう。心筋梗塞・肺塞栓・脳卒中などを否定できません。

38.5℃以上の高熱が3日以上続く場合は細菌感染やインフルエンザなどの精査が必要となる場合があるため、当日〜翌日 には受診が望ましいです。

血便、タール便や血尿が見られた場合は当日に受診しましょう。消化管出血や尿路系疾患の可能性が疑われます。

特別な理由がないのに急激な体重減少(1ヶ月で体重の5%以上)がある場合、悪性腫瘍・内分泌疾患等のスクリーニングが必要があるため、なるべく早期に受診を検討してください。

その他、持病の急激な悪化がある場合や今までに経験のない激しい頭痛、腹痛(特に持続する場合)なども緊急な受診が必要となる場合があります。

6. セルフメディケーション税制とは

2017年1月1日から施行されたセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、一定の条件を満たす場合に対象のOTC医薬品の購入費を所得控除できる制度です。 健康の維持増進のための取り組み(定期健診・特定健診・予防接種等)を行っていて、対象のOTC医薬品(厚生労働省が指定するもの)を一定金額以上購入した場合に適用されます。対象となる医薬品はレシートに「★」マーク等で識別可能になっています。年間購入額から12,000円を差し引いた額が課税所得額から控除(上限:88,000円)されます。確定申告にて申告を行いますが、通常の医療費控除との併用不可のためどちらか一方を選択します。生計を一にする同居家族も合算して申告可能です。

さいごに

本記事は、一般的な医療・薬学情報の提供を目的としています。

実際の治療や服薬については、必ず医師または薬剤師にご相談ください。

迷ったときは薬剤師に声をかけてください。薬剤師は「薬を売る人」ではなく「薬と健康の専門家」です。ドラッグストアや調剤薬局での無料相談を積極的に活用することを、薬剤師としてお勧めします。

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